事前に考えておく事(実例)
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 事前に考えておく事では、まずは万が一の場合、故人さまを何処にご安置するか、を考えておく事が必要であるとお伝えしましたが、今回はそれに関連したご安置場所と故人さまの搬送方法、お葬儀の方式の実例をご紹介していこうと思います。

寝台車往復

 このケースでは病院でご逝去されたお父様を迎えにいきました。喪主さまはご長男さま。

 まず喪主様に安置場所のご要望をお聞きした所、喪主様自身、自営業で忙しく、奥様もお仕事をしておられ、お子様たちは学生で学校がある、という事で、誰もそばに付いていてあげられない、という事で、その時は夏場であった事もあり、付添いは出来ないがご遺体の保全になる冷蔵霊安室でお預かりする、という事となりました。

 ご安置も終わり、打ち合わせでお葬儀のお見積りも終え、お通夜は3日後、お葬儀は4日後と確定し、3日後まで付添いが出来ない旨、改めてお伝えして、喪主さまは帰られました。

 それから数時間後、喪主さまより連絡があり、高校生の次女さまが学校を早退してこられ、故人さまを預けた事に可哀そうだと泣きながらに付添いしてあげたいと懇願された為、付添いの出来る安置所へ変更したいとの事でした。その時は空きが民間の貸会館にあった為、そちらでの安置となり、寝台車を手配して故人様に移動して頂きました。

 安置も終わり、次女さまも落ち着かれた所へ大学生の長女さまが安置所へお越しになり、故人さまの顔を見られた途端に怒り始めました。故人さまは入院中にしきりに自宅へ帰りたいとおっしゃっておられたのに、なぜ家に帰してあげないのか、辛い入院生活だったのだから、最後くらい願いをかなえられないのか、と。その剣幕に喪主さまも折れ、ご自宅への安置へと変更になりました。

 この時には本来であれば、病院から自宅、自宅から斎場の二回分の寝台車搬送料である所が、病院から冷蔵安置室、冷蔵霊安室から付添い安置所、付添い安置所から自宅、自宅から斎場、と四回分の寝台車搬送料と二か所の施設使用料がかかった事になります。

 このように大事な事を決定する際には家族だけでなく、親戚からの不満を買う事もありますので、ある程度のコンセンサスは取っておかれる方が良いかと思います。

ご安置場所

 このケースでは病院でご逝去されたおばあさまを迎えに行きました。喪主さまはお孫さんである兄弟のお兄さん。

 ご兄弟はまだ二十代前半と歳若く、ご両親は小さいころ亡くなられたとの事で、費用もかける事が出来ず、おばあさまの自宅でお別れをして火葬のみという依頼でした。

 病院から自宅へ到着し、安置場所を確認すると、家の中はおばあさまの入院が長かったという事もあり、荷物やごみが散乱しており、辺りは埃だらけで故人さまを寝かせる布団もない、という状況でした。

 費用が無く、安置所は利用できないという事でご兄弟が用意されたのが、ダンボール箱でした。みかんのダンボール箱二つを並べてそこへストレッチャーから納体袋のまま乗せてご安置としました。ダンボール箱二つでは背中と腰しか乗っておらず、他は宙に浮いている状態で、ダンボール箱の耐久性も不安だった為、ご兄弟にこの後すぐに対処するようにお願いしました。

 故人さまの自宅や普段お住まいではない所にご安置する場合はやはり一度見ておく事で布団が無い等のハプニングが防げると思います。出来ない場合は病院へ向かう時、車なら布団を持って行っておくか、葬儀社へ相談しておくと良いかと思います。

長距離搬送と葬儀の方式

 ここで寝台車の搬送料金に関わる実例についてお話してまいります。故郷から都心に出て来られた方が、都心の病院でご逝去され、親類の意向で田舎でお葬儀をしたいとのご相談がありましたのでその際の事となります。

 故人さまは男性で単身者で家族、奥様やお子様はいない、という事で、田舎からこの方の従弟夫婦が看取りに出て来られ、相談となりました。喪主さまは従弟さまのお父様で、故人の弟さま。

 まずは病院を出なければいけないという事で、迎えに行き、付添いのできる安置所へ入って頂きました。

 そして田舎までの距離は300km以上あるとの事。寝台車で搬送するとその料金は多めに400kmで計算して約20万円となり、そこに高速料金が必要となりますし、時間により夜間料金、葬儀社や寝台業者によっては助手などの費用がかかる場合があります。

 寝台自動車は事業そのものが法律に基づき、国土交通大臣の認可を受けなければならず、その搬送料金は各業者が陸運支局へ届出をして適正であると認められたものですので、大体同じくらいの金額と考えて良いと思います。

 ちなみに葬儀社によっては寝台料金が初回無料とか特典があると、お話しましたが、これは法律的にはダメなようです。実際に行われていますけれどもね。

 本題に戻りますが、約20万円という金額を伝えるとびっくりされておられました。そこで二つの他の選択肢を提示しました。

骨 葬

 一つ目が骨葬です。

 これは通常のお葬儀ではお通夜から葬儀・告別式そして火葬となる流れを先に火葬を執り行う方式です。葬儀での供養の対象が故人さまの遺体ではなく、遺骨となります。東北や九州の一部では風習として行われる事もあるようですが、一般には変則的に感じるかも知れません。

 この骨葬にもメリット・デメリットがありますのでご説明してまいります。

 今回のケースのようにご逝去地と葬儀を執り行う場所が遠く離れている場合、前述のように寝台車料金など、高額になる場合がありますが、今回の場合は先に都心で火葬を執り行うので田舎へは遺骨を連れて帰るだけとなります。搬送にかかる費用を削減できます。

 そして、ご遺体のある葬儀では斎場など葬儀の執り行える施設が限られますが、遺骨になると、ホテルでのお別れ会など、選択肢が増える事もあります。

 また、遺体が傷むという事もありませんので、都合の良い時期を選んで執り行う事ができます。

 あと、孤独死など時間が経ってから発見され、遺体の状態が良くない場合は臭いや衛生面から先に火葬を行う事もあります。

 遺体がないので当然ながら、故人の顔を見てのお別れが出来ない事。親族や友人の中には不満に感じる方がおられるかも知れません。

 それに骨葬になじみがない地域では、「なぜ、この形式にしたのか?」と何度も聞かれてしまう事もあります。デリケートな問題もありましょうから、精神的な負担となる場合もあり得ます。

 今回のケースでは田舎の親族と相談し、遺体を田舎の喪主さまのご自宅まで搬送してからのお葬儀を希望されました。

飛行機による搬送

 そこでもう一つの選択肢、飛行機による空輸を紹介しました。これは名前の通り、ご遺体を寝台自動車で都心の空港まで搬送し、田舎の最寄りの空港まで飛行機で搬送、到着時間に合わせて、田舎の方で手配した寝台自動車に迎えに行ってもらう、というものです。

 費用的には空輸費用だけで距離400kmとして重量にもよりますが、2万円前後となります。ただし、この金額はご遺体のみの費用となります。寝台自動車では遺族も同乗できる事もありますが、飛行機では貨客混載の便だとしても、すぐそばに付きそう事は出来ませんし、遺族の運賃は別途必要になります。

 それと、空輸費用に加えて2回分の寝台車料金が必要となります。ここは空港との距離もありますので、空輸をお考えの場合は葬儀社へ相談されると良いと思います。空港との距離がさほど無ければ、寝台自動車での搬送に比べ、三分の一程度に抑えられる事もあるでしょう。

 そして空輸のデメリットとしては、「貨物」扱いとなる事です。空輸する時には棺に入った状態となりますが、蓋が外れないようにテープを巻いたり、緩衝材でくるんだり、と完全に「荷物」として扱われます。葬儀社によっては梱包代も必要になるかもしれません。先に申し上げた通り、付添いは出来ませんので、このあたりをどう捉えるかだと思います。

 今回のケースでは、寝台自動車による搬送よりも早く到着する便があった事もあり、飛行機での空輸をお選びになられました。従弟夫婦のお二人が、梱包されたお棺に向かって「少しだけ我慢してね」と語りかけておられたのが印象的でした。

まとめ

 今回はこんな事もあり得る、という事例をご紹介してまいりました。前回と今回で万が一の場合、あらかじめご安置場所を定めておくと慌てる必要がないですよ、とお話してまいりました。事前に家族や親族と相談しておくのはなかなか難しい面もあるでしょうが、最終決定する際にはやはり同意を得ておいた方が良いでしょう。場合によっては葬儀が終わってからも精神的な負担を感じる事もあるかも知れません。そして安置場所に予定している所が安置施設以外の家だとかでしたら一度は状況を見ておかれた方が良いと思います。

 そして終活中の方なら安置場所やお葬儀の内容などの希望をエンディングシートなどで残しておかれると、遺族の負担も減る事もあります。やはり故人の遺志というのが、人は納得しやすいですから。